準備委員会企画 ②
2024年 9月29日 (日) 14:30 – 16:00
参加無料
公開講演
人類の大転換期に私はどう生きるか
九州大学・東亜大学名誉教授
村山正治 先生
私には大学紛争を体験した1960年代の世界的パラダイムシフトと、そして次にまたもっと大きなパラダイムシフトの時代の今を生きているという感触があります。
大学教員、PCAファシリテーター、カウンセラーなど対人援助職の仕事をしている私には何が出来るでしょうか。
私は、ロジャーズとジェンドリンの実践と思想から大きな影響を受けています。また大学紛争の体験から、福岡人間関係研究会というEGコミュニティを仲間たちと創設し、今も細々と活動を続けています。ロジャーズは紛争解決にエンカウンタ-グループをツールとして活動し、1987年ノーベル平和賞の候補になりました。心理臨床で開発した「人間理解の対話」をするアプローチが認められて受賞候補になったということです。
私と同じような問題意識は、ウクライナの心理学者Lysnyk(2023)が、サポートグループを実践している、との報告にもみられます(押江、2023)。
本学会でも、金子周平(2023)がディープな多様性、公平性、包摂性の重要性を指摘し、その方向性は本学会の創設時の理念と符合していると指摘しています。
更に、押江隆(2023)が「コミュニティの危機と再生」の編集を組み、優れた実践論考が提出され、人間性心理学の新しい動きが見え、頼もしい限りです。
私の講演は、第1に、50年にわたる時間コミュニティとしてEG体験を中心として生まれた「福岡人間関係研究会」活動。そこから学んだことを話したい。EGから生まれてくる新しい人間像、生き方論、ネットワーク論、時間コミュニティと地域コミュニティの相異とその連携が社会変革性につながる体験に触れたいと思っています。
第2に、PCAGIP法による組織、個人、コミュニティの変革です。ロジャーズに因んだ「静かな革命」のアプローチの一つです。「困っている当事者の理解を目的とする対話のアプローチ」とよんでもよいと思います。もしくは「事例検討のために村山によって創案されたアプローチ」です。現在は教育、看護、産業、組織、福祉などの領域で実践されています。何が産まれてくるのかリサーチもこれからです。
文献
金子周平(2023): 人間性心理学会のディープな多様性、公平性、包摂性 日本人間性心理学会ニュースレター 103, 1.
Lysnyk,K. (2023): Conducting psychological support groups online during the war in Ukraine, Person-Centered & Experiential Psychotherapies 23(1), 70-84. DOI: 10.1080/14779757.2023.2167735
押江隆(2023): コミュニティの危機と再生 人間性心理学研究 41(1), 1-5.
講師紹介
村山 正治(むらやま しょうじ)
東亜大学大学院 臨床心理学専攻 客員教授、九州大学名誉教授
略歴
東京都生まれ。京都大学大学院教育学研究科博士課程、教育学博士。人間性心理学、おもにロジャース、エンカウンター・グループ、フォーカシングの分野で臨床・研究を活発に展開。現在は、ケースカンファレンスにおける事例提供者の体験プロセスを大事にするPCAGIP法を開発し、実践している。長年の院生教育に対して「自分の鉱脈を探すこと」を重視し、「育てるより育つ」の態度で取り組む“耕育(こういく)”を考えている。日本臨床心理士資格認定協会理事、日本臨床心理士会常務理事、日本人間性心理学会運営委員長、学校臨床心理士ワーキンググループ代表、日本フォーカシング協会代表、福岡人間関係研究会代表などを歴任。
主要著書
『スクールカウンセラー』(共編著、1995年、ミネルヴァ書房)
『ロジャースをめぐって』(2005年、金剛出版)
『新しい事例検討法 PCAGIP入門』(共編著、2012年、創元社)
『現場で役立つスクールカウンセリングの実際』(共編、2012年、創元社)
『「自分らしさ」を認めるPCAグループ入門』(編著、2014年、創元社)
『心理臨床講義』(共著、2015年、金剛出版)
『スクールカウンセラーの新しいパラダイム』(2020年、遠見書房)
『どこへ行こうか、心理療法』(共著、2022年、創元社)
『私のカウンセラー修行』(2022年、誠信書房)
『パーソンセンタード・アプローチとオープンダイアローグ』(共編、2023年、遠見書房)
主要翻訳書
ジェンドリン『フォーカシング』(共訳、1982年、福村出版)
H. カーシェンバウム,V. L. ヘンダーソン『ロジャーズ選集(上)(下)』(共訳、2001年、誠信書房)
『ロージァズ全集』全23巻(共編訳、岩崎学術出版社)など
公開講演の参加費は無料です。
公開講演のみに参加される場合、大会参加費の支払いは必要ありません。
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