ワークショップ

ワークショップ参加概要

ワークショップ一覧

2024年3月1日更新

ワークショップ参加費

事前参加費
(論文集1冊分を含む)
当日参加費
(論文集1冊分を含む)
ワークショップ参加費
(事前予約のみ)
会員
(正会員・準会員)
8,000円10,000円8,000円
臨時会員
(非会員)
10,000円12,000円10,000円
学生
(会員)
4,000円5,000円4,000円
学生
(非会員)
5,000円6,000円5,000円
※名誉会員の方は無料

ワークショップ参加登録について

ワークショップ参加には事前に参加登録の申し込みが必要となります。
また、ワークショップは大会参加費とは別に参加費用が必要となります。
参加を予定されている方は、申し込み期間内に登録・参加費のお支払いをお願いいたします。
なお、名誉会員の方のワークショップ参加費は無料となります。

ワークショップ参加登録申し込み期間

参加登録申し込み期間

2024年 3月29日(金)10時 ~ 2024年 7月31日(水)

参加費支払い期間

2024年 7月31日(水)

ワークショップ参加登録申し込み

ワークショップに参加される方は「参加者の方」ページの大会参加申し込みよりお申し込みください。

ワークショップ紹介

 WS 1 

サイコロジカル・ファースト・エイド

益田充先生(日本赤十字社和歌山医療センター)
押岡大覚先生(九州女子大学人間科学部)

内容紹介

災害時はもとより、平時でも事件事故の被害者等との初期対応において、対応 するスキルを皆さんと共有させていただきます。


講師紹介

益田 充

所属
日本赤十字社和歌山医療センター
救急科·集中治療部副部長
消化器外科/精神科 医師
国際医療救援登録要員

主著書等
EMDR G-TEP(集団トラウマエピソードプロトコル)を日本に初めて紹介。
国内の被災地(茨城·熊本·能登)や海外の難民キャンプ(バングラデシュ·パレスチナ)等での医療/心理支援経験多数。


押岡 大覚

所属・資格等
九州女子大学 人間科学部 心理・文化学科 教授
臨床心理士 公認心理師 TFTアルゴリズムセラピスト

本WSに係る主な研修歴
・災害医療研修ベーシックコースおよびアドバンスコース 修了
(主催:公益財団法人 国際医療技術財団)
・災害時PFA(Psychological First Aid;心理的応急処置)と心理対応研修 修了
(主催:国立研究開発法人 国立精神・神経医療研究センター)
・スフィアハンドブック(人道憲章と人道支援における最低基準)研修 修了
(主催:新潟大学医学部災害医療教育センター)
・人道行動における子どもの保護の最低基準(Minimum Standards for Child Protection in Humanitarian Action;CPMS)研修 修了
(主催:新潟大学医学部災害医療教育センター)


定員:最大50名程度

WS参加にあたって
参加型のワークショップですので、被災者や被害者対応に自分たちで対応するつもりで、自分ごととしてご参加いただくことを要望します。

 WS 2 

公開スーパーバイズ

増井武士先生(東亜大学大学院客員教授)

研修目的及び方法

私の公開スーパーバイズは常にレジメはなく事前の打ち合わせや報告される本人との対面もありません。
主な理由は、今ここに起きている気持ちや疑問に対して自己感覚を強化することにあるからです。
この目的は治療的面接と全く同じです。
治療面接にレジメや打ち合わせがないことと同じです。
個人の心の中の自然な、今ここに流れる流れのままに活きられる事は、人が自然な流れに身を預ける事であり、全ての精神療法の普遍的な目的とも言えます。これは、今、ここを活きる能力の育成とも言えます。
研修時間が長いので、スーパーバイズは個人的なものと、私なりに考案したピカジッブの臨床的な応用のバイズとなる予定で、質疑応答の時間をゆっくりとる予定です。


講師紹介

増井 武士

略歴~九州大学大学院博士課程終了後、九州大学助手から産業医科大学医学部医学心理学教室准教授、及び同大学病院の精神科併任し精神療法外来担当、同大学卒後教育センターを併任。教育学博士(九州大学)。
医科大学定年後、九州産業大学教授を経て、現代東亜大学大学院客員教授。
日本臨床心理士会理事、福岡聖恵病院理事、同病院精神療法増井外来担当。

主著
治療的面接への探求 「増井武士論文選集」1巻~4巻、2007、人文書院。
頼談者のための治療的面接とは~心理臨床の質と公認資格を考える~。2019、遠見書房。
不登校児から見た世界~共に歩む人びとのために~有斐閣選書。
症状に対する適切な努力、治療的面接第2巻、人文書院、2007。
など。


WS参加にあたって
私達はプレイセラピーは楽しくやるものだ。と言うことを眉間にシワ寄せて真夜中まで深刻に話し合うという自己矛盾を学会の場などでよく見かけます。
このような自己矛盾を起こさないことは、簡単なようですが、意外と難しい場合もあります。

 WS 3 

重要な過去経験はどうすれば言葉にできるのか

――ライフストーリー・レビューという考え方――

高松里先生(NPOライフストーリー・バンク)
井内かおる先生(福岡市こども総合相談センター)

内容紹介

 「重要な過去経験」とは、ライフストーリー上の大きな出来事を指します。例えば、治らない病気になる、障害を持つ、犯罪被害に遭う、大切な人と死別や離別をする、虐待やいじめを受ける、などです。あるいは、最近であれば、貧困経験をする、自然災害に遭う、COVID-19に対応する、SNSで炎上する、などもあるでしょう。また、留学をする、長期旅行をするなどの一見ポジティブな出来事や、転勤や転校など多くの人が経験するライフイベントも、人生を大きく変える出来事になり得ます。
 このような経験により、それまで思い浮かべていたライフストーリーは変更せざるを得なくなります。例えば、津波で家を流された人は「この家で家族揃って皆で暮らして年を取っていく」というストーリーを失ってしまいます。
 この時、人々は「言葉にならない」という言い方をします。想定されていなかった初めての経験を、私たちは言葉にすることができません。ライフストーリーはこの出来事により離断あるいは不整合を起こします。過去・現在・未来が繋がらなくなります。言葉にならないわけですから、それを他者に説明したり訴えたりすることができず、孤立します。
 では、離断したライフストーリーはどうやったら繋がるのでしょうか。繋げるものは、やはり「言葉」です。どんな言葉を使い、どんな表現をすれば、自分の経験に近いことを言い表せるのかを探る必要があります。ただ、その作業は一人ではできません。。
 言葉にするには他者が必要です。話を聴きとり、質問をし、その人自身の経験を語ってくれる他者がいるとき、ようやく自分らしい言葉が見つかってきます。そして人とのつながりを再獲得していけるのです。また、新しく生まれたライフストーリーは、人生で「何が大事なのか」という重要性の順位などが入れ替わり、前のものとは違ってきます。
 高松は2015年に「ライフストーリー・レビュー入門――過去に光を当てる、ナラティブヴ・アプローチの新しい方法」(創元社)という本を書きました。その後も、フィンランドでオープンダイアローグの研修を受けるなどしながら、さらに経験の言語化がどのような環境で促進されるのかを考えてきました。
 その成果は、人間性心理学会において、ここ数年連続して発表を続けています。全国の仲間と「経験の言語化プロジェクト」という名称で、研究会を続けてきました。
 本ワークショップでは、これまでに到達した方法を「ライフストーリー・レビュー標準プロトコル」として提示し、それに従ってまずデモンストレーションを行います。さらに小グループに分かれて、実際のセッション(2時間程度)を行う予定です。特徴は、語り手一人に対して、複数の聴き手・オーディエンス・ファシリテーターを用意することです。聴き手は傾聴に徹することはせず、積極的に質問をし、話を聴いているうちに想起された自分自身の経験も語ります。リフレクティングも使いながら、最終的には語り手のみならず、すべての参加者にとって意味のある経験が生じることを目指します。
 実は、心理臨床の専門家こそ、自分の経験を語るべきではないかと思っています。参加者のみなさんのライフストーリーが響き合う時間にしたいと思っています。


講師紹介

高松里

臨床心理士・公認心理師
九州大学留学生センターを2023年3月に退職。「NPOライフストーリー・バンク」共同代表。
セルフヘルプ・グループやサポート・グループの研究を続けてきたが、その最重要な機能はライフストーリーの不整合や離断を言葉によって繋ぎ直すことなのではないかと考えている。地域グループ活動が評価され、本学会では2008年学会賞をいただいた。

主な著書
単著「改訂増補セルフヘルプ・グループとサポート・グループ実施ガイド」(金剛出版、2020年)、単著「ライフストーリー・レビュー入門」(創元社、2015年)、編著「サポート・グループの実践と展開」(金剛出版、2009年)等


井内かおる

臨床心理士・公認心理師
福岡市こども総合相談センター心理相談員。「NPOライフストーリー・バンク」共同代表。
子どもの頃から海外に関心があり、これまで訪れた国は約30カ国。青年期に訪れたフィンランド、フィリピンで心に残る体験をし、フィリピンでのエピソードについては高松のライフストーリー・レビューの方法で言語化を試みた。
中3時に母と死別、大学2年時に父と離別、それらに伴って相対的貧困を経験し、辛い思春期青年期を過ごした。また、この経験がその後の人生に及ぼしている影響も大きいと感じ、言語化を約30年間試み続けて現在に至る。約30年の言語化の営み全体が、私のこの経験にまつわるライフストーリー・レビューだと言える。

主な著書等
「自分の経験を言語化する―親がいなくなる経験の言語化と展開」(「パーソンセンタード・アプローチとオープン・ダイアローグ」遠見書房、2023年、分担執筆)、「多職種共働―オープンダイアローグからの手掛かり」(臨床心理学第19巻第5号、金剛出版、2019年)


定員:25名程度

 WS 4 

ベーシック・エンカウンター・グループ体験

松本剛先生(兵庫教育大学大学院学校教育研究科)
大島利伸先生(南山大学附属小学校)

ワークショップの内容

ベーシック・エンカウンター・グループを体験します。
ただし、今回は短時間の実施になりますから、半構造化エンカウンターの要素も取り入れたいと考えています。


講師紹介

松本 剛

神戸親和大学
人間性心理学的アプローチの立場から個人,グループの臨床に関わってきました。

主要著書
『エンカウンター・グループの新展開: 自己理解を深め他者とつながるパーソンセンタード・アプローチ』(共編著・木立の文庫,2020),『パーソンセンタード・アプローチの挑戦 現代を生きるエンカウンターの実際』(共著・創元社,2011),『傾聴の心理学:PCAをまなぶ』(共著・創元社,2017),『心の健康教育』(共編著・木立の文庫,2019)などがある。


大島 利伸

南山大学附属小学校、南山大学大学院人間文化研究科教育ファシリテーション専攻非常勤講師
人間中心の教育の在り方に関心があります。ベーシック・エンカウンター・グループを活用して、「学級での話し合いの時間」や「保護者への子育て支援グループ」の実践に取り組んできました。

主要著書
『エンカウンター・グループの新展開: 自己理解を深め他者とつながるパーソンセンタード・アプローチ』(共著・木立の文庫,2020),『人間中心の教育』(共著・コスモスライブラリー,2012),『パーソンセンタード・アプローチの挑戦 現代を生きるエンカウンターの実際』(共著・創元社,2011),などがある。


定員:9名

 WS 5 

臨床観を育むパーソン・センタード・トレーニング

並木崇浩先生(愛知淑徳大学学生相談室)

ワークショップの内容

 心理臨床において、技法や理論は当然欠かすことはできません。ですがそれと同様、もしくはそれ以上に、セラピストその人自身が重要な要素であるといえます。パーソン・センタード・セラピー/アプローチ(以下、PCTとします)では、クライアントのパーソナリティ変容の条件としてセラピストの態度(受容・共感的理解・一致)が含まれています。では、態度という内的体験を私たちはどのように理解、実践していけばよいのでしょうか? 文献を読むことで、またグループや研修で体験的に学ぶことができるでしょう。では、それらで知り得た「正しい」受容や共感的理解を実践すれば、PCTなのでしょうか? 熟練のセラピストから学んだ知恵や技を身につければ、私たちはPCTのセラピストと成れるのでしょうか? ここでPCTの妙となる概念が一致(congruence, genuine, authenticity)です。私たちがPCTのセラピストであるには、自分自身であることが必要なのです。では、自分自身であるとは如何なるものでしょうか? RogersやGendlinから感じられる彼らのgenuineな態度に達することができれば、私たちはより自分自身に成れていると言えるのでしょうか?
 この様に問い続けていくと、「三条件の態度でクライアントに臨むことが私にとって本当に臨床実践なのか?」という問いに行き着くかもしれません。他にも、個々人によって臨床の根幹を揺るがす様々な問いに行き着き得ると思います。これらの問いに応えることが、翻ってより自分自身になることへ、そしてPCTのセラピストとしての成長へつながると私は考えています。本ワークショップでは、自分自身としての在り方の一側面として、セラピストの臨床観に着目します。
 ワークショップの具体的な構成は以下の通りです。前半は、セラピストがより自分自身になることの意義について、主に講義形式でお話します。適宜ワークを行い、参加者の方々の日々の臨床や自身の臨床観について振り返る機会を設けます。後半では参加者自身の臨床観を育むための手段として、「Contemplative Dialogue Method」を紹介し、実際に行います(こちらの手法を事前に知りたい方は主要著書の最初の文献をご覧ください)。このワークは、具体的な体験から端を発した問いを参加者同士の対話を通して応えていくものです。
 本ワークショップの内容は、主にPCTの理論に立脚していますが、PCTのセラピストになるためだけが目的ではありません。セラピストがより自分自身になることを目指しているので、他のオリエンテーション、特に人間性心理学をベースとしているセラピストの成長にも寄与できると思っています。また学生や初学者の中には「私はPCTをオリエンテーションにできているのか?」と疑問、不安を抱いている方もいらっしゃるかもしれません。そのような方にこそ、ご自身の臨床観を見つめ直し発展させる機会になるかと思いますので、関心があれば是非ご参加ください。


講師紹介

並木 崇浩

愛知淑徳大学 学生相談室 助教
私はこれまで、パーソン・センタード・セラピー、特にセラピストの成長について、哲学や倫理、そして統合の観点から研究してきました。「パーソン・センタードとは何か」というテーマに魅了されて探求を続けています。最近は出会いや対話という現象、関係性に関心があります。臨床実践でもパーソン・センタード・セラピーをオリエンテーションにしながら、現在は学生相談を主な領域としています。

主要著書
パーソン・センタード・トレーニング:「Contemplative Dialogue Method」の開発 -way of beingとしての価値観の探求と統合を目指して-. 関西大学心理臨床センター紀要 14,43-52, 2023.
パーソン・センタード・セラピストが‘哲学する’意義:beingとセラピストの自己の利用の観点から. 人間性心理学研究 36(1), 69-77, 2018.
パーソン・センタード・セラピストとして倫理的であることに関する一考察. 関西大学心理臨床センター紀要 14,35-42, 2023.
Introduction of the person-centered training ‘Contemplative Dialogue Method’ and qualitative exploration of trainees’ experiences, Person-Centered & Experiential Psychotherapies, 2023


定員:18名

 WS 6 

平和を語る

吉川麻衣子先生(沖縄大学人文学部)
都能美智代先生(「かまんや」主宰)

WS概要

 この度,私たちは「平和を語る」をテーマにワークショップを企画しました。このセッションの主な目的は,参加者の皆さまと共に「平和」への想いを共有することです。
 世界各地で絶え間なく続く戦禍の現状があります。また,コロナ禍を通じて,自分にとって何が本当に大切かを見つめ直した方も多いのではないでしょうか。このセッションでは,国際社会における平和のみならず,個々人の心の安らぎや充実感といった,内面的な平和にも目を向けたいと思っています。
 世代や地域を超えて,参加者の皆さまが日常的に使う言葉で,ご自身の想いや体験を安心して共有できる場を共創したい。対話を通じて,日常生活で感じる平和の意味や価値観を共有し,平和を実現するために私たちができることを共に模索したい。このようなスタンスでワークショップを展開して参ります。
 さて,皆さまは「平和」について,どのような話を共有したいですか?


講師紹介

吉川 麻衣子

沖縄大学人文学部
沖縄戦を生きぬいた人びとが語り合う場を開催し続け,間もなく20年が経とうとしています。学生時代から,過去を語ることによって心の平和を求める取り組みに尽力してきました。このワークショップでは,沖縄に関する研究について話す機会もあるかもしれません。


都能 美智代

かまんや主宰
PCAをベースとして,緩和ケア,学生相談,メンタルヘルス領域の臨床に関わっています。今まで平和をテーマに語った経験はありません。ただ,今こそ「コミュニケーションしようよ」ということだけは感じています。


講師の主著
『パーソンセンタード・アプローチとオープンダイアローグ―対話・つながり・共に生きる』 遠見書房 2023
『心理臨床の学び方―鉱脈を探す,体験を深める』 創元社 2015
『沖縄戦を生きぬいた人びと―揺れる想いを語り合えるまでの70年』 創元社 2017


定員:20名

WS参加にあたっての参加条件
参加者それぞれの考え方を大切にできること

 WS 7 

オープンダイアローグやソマティック心理学から学ぶ対話

〜家族療法の視点やポリヴェーガル理論を用いて〜

浅井伸彦先生(一般社団法人国際心理支援協会)

内容紹介

 オープンダイアローグが、本格的に日本に紹介されてから10年近くが経ちました。また、フィンランドの西ラップランド(ケロプダス病院)での実践に、「オープンダイアローグ」という名前がつけられてから、2024年8月で40年となりました。
 ODは家族療法から発展したアプローチであるものの、ナラティヴ・セラピーやコラボレイティヴ・セラピー等と同じく、クライエントの主体性や人間性を重要視したアプローチが隆盛しています。ODでは、リフレクティングという「クライエント(患者)やそのご家族、社会的ネットワークの門前で、セラピスト同士が向き合って話し合う方法」を取り入れていることから、そこがあまりに技法的に取り上げられ過ぎているように思われる例や、また逆に民主的でヒューマニスティックなところに「ただ、オープンに話し合い(対話)をすることが重要だ」と考えられる例など、何がODで、何がODでないのか?というところが不明瞭になりがちのように思われます。筆者も常々感じていることにも、ベーシック・エンカウンター・グループとの共通点があります。尤も、OD自体の在り方が、不確かさの中にいることを重視しており、多様な在り方を許容していることから、定義しきらないことが良いことであるとも考えられます。
 とはいえ、掴みどころがなさすぎることは学びを難しくし、ややもすれば真逆ともいえるような実践のことをODと呼んでしまう危険性もあります。ODにおいて、専門家の鎧を脱ぐということが強調される一方で、鎧は着なければ脱ぐことはできないということも言えるでしょう。ODでは、家族療法や解決志向アプローチ、ナラティヴ・セラピーで用いられる質問法や多様な視点に影響を受けていることは明らかです。またODではembodimentという言葉で、フォーカシング指向とも似たhere and nowの在り方を重視していることから、最近よく知られるようになった自律神経系に関する仮説理論であるポリヴェーガル理論や身体志向のトラウマケアにもつながりが多かれ少なかれあると思われます(実際にケロプダス病院でも、ODからトラウマ治療に繋ぐことがあるそうです)。
 以上のことから、本ワークショップではODについての基礎的な内容の紹介のほか、ベーシック・エンカウンター・グループのとの異同、家族療法やソマティック(身体的)なトラウマケアやフォーカシング指向心理療法との異同などについて議題を複数提起し、実際のダイアローグ体験を通して、ヒューマニスティックな対話の在り方について考えるきっかけとなればと願っています。


講師紹介

浅井 伸彦

一般社団法人国際心理支援協会 代表理事(MEDI心理カウンセリング東京/大阪 代表)、株式会社Cutting edge代表取締役、南浦和つながりクリニック臨床心理士。
オープンダイアローグ国際トレーナー、公認心理師、臨床心理士、保育士。
専門は、オープンダイアローグ、家族療法、トラウマケア。

主要著書
「はじめての家族療法(浅井伸彦編著,松本健輔著,坂本真佐哉(監修),北大路書房,2021)」
「あたらしい日本の心理療法(池見陽・浅井伸彦編集,遠見書房,2022)」


定員:25名

 WS 8 

中動態とPCA

本山智敬先生(福岡大学人文学部)

内容紹介

 中動態は國分功一郎氏(2017)の本が出版されて以降、広く知られるようになりました。それ以前は木村敏氏(2014)の「中動態的自己」論もあります。中動態は様々な角度から多様な捉え方が可能ですが、今回は主に國分氏の中動態の捉え方をベースに考えていきます。その上で今回のワークショップでは、中動態を3つのパート、「言語学としての中動態」、「哲学としての中動態」、「臨床としての中動態」に分けて進めていきます。
 「言語学としての中動態」では、現代の「能動態と受動態」の対が生まれる以前の「能動態と中動態」の対の捉え方について説明します。言葉の使い方は当時の人々の考え方を反映しています。その点において、まずは言語学の側面からの理解を通して、現代のものの見方を一旦横に置き、当時の「中動態的なものの見方」を理解していきます。
 「哲学としての中動態」では、主にスピノザ哲学を取り上げます。スピノザの哲学は中動態そのものです。いくつかの重要なキーワードを押さえながら、最終的にはスピノザの「自由」の概念について考えていきたいと思います。
 「臨床としての中動態」では、中動態とPCAの接点について検討していきます。まずは私なりに考えている「中動態的理解」論について説明し、そうした中動態的理解から生まれる関係がなぜ援助的であるのかについて検討します。私はこの点にこそ、「PCAのセラピストはクライエントとの間にどのような関係を作ろうとしているのか」を考える上での重要なヒントがあると考えています。また、「一致(自己一致)」や「自分自身でいること」、「自己受容」といったPCAの重要な概念を中動態の世界から改めて捉え直してみたいと思います。
 PCAには「基本仮説」(Rogers, 1980)はありますが「定義」はありません。つまり、PCAをどのように捉えるかは私たち一人ひとりが言葉にしていく必要があります。それは自分の臨床を言葉にしていくことでもあります。私は中動態に出会い、自分の臨床感覚の特に自分が大事にしたい「かかわりの感覚」を中動態の世界から感じ、とても救われる思いがしました。そうした自身の体験についても語ります。
 中動態を理解することは容易ではありません。今回のワークショップでは、中動態の完全な理解を目指すというよりも、皆さんにとって、中動態を学ぶことが自身の臨床を考える上で何かヒントを得ることにつながりそうか、もしそうだとすればどのような点にあるか、皆で一緒に語り合っていきたいと思います。


講師紹介

本山 智敬

福岡大学 人文学部 教授
長年エンカウンター・グループの実践と研究を行ってきました。2015年の年末にオープンダイアローグに出会って以来、個人の尊重とネットワークの視点を融合して、中高生の交流授業、里親支援のネットワークづくり、高齢者施設での仲間づくり等の地域人たちのつながり支援に力を入れています。また、いのちの電話のボランティア相談員のサポートや、成年後見人の研修等を通して、非専門家の人たちにPCAの考え方を伝えていく活動も続けています。

主要著書
『ロジャーズの中核三条件 一致/受容:無条件の積極的関心/共感的理解 カウンセリングの本質を考える(三文冊)』(共編著, 創元社, 2015)
『私とパーソンセンタード・アプローチ』(共著, 新曜社, 2019)
『エンカウンター・グループの新展開 自己理解を深め他者とつながるパーソンセンタード・アプローチ』(共編著, 木立の文庫, 2020)
『パーソンセンタード・アプローチとオープンダイアローグ −対話・つながり・共に生きる』(共編著, 遠見書房, 2023)


定員:25名

 WS 9 

エピソード記述と語り合い法

大倉得史先生(京都大学総合人間学部)
山本知香先生(滋賀大学教育学部)

概要

 エピソード記述は、対人実践の意味を探求するための質的研究です。研究者(実践者)自身の内面も含めて考察するという特徴をもつため、実践の省察と直接的につながっています。たとえば、自分の言葉が相手に確かに「伝わった」と感じられた手応えや、表面的にはフツウのやりとりをしながらも、そこはかとなく感じる違和感などは、客観的事実をその証拠として提示することは難しいでしょう。ですが、実践の現場では相手から「感じられたこと」によって関わりの方向性が決まり、それがその後の臨床にとって重要な意味をもつ場合があります。目には見えない内面のやりとりについて、客観的なエヴィデンスを提示できないから研究しないのではなく、目には見えないからこそ描き、積極的に考察の対象としていこうとする、それがエピソード記述です。描くことで、相手の理解を深め、自分の中に隠れていた「問い」に出会う面白さの一端を体験していただけると嬉しいです。
 一方、語り合い法はエピソード記述の発想を活かした独特のインタビュー法です。一般的には、①「情報提供者」としての協力者に経験や知識を語ってもらい、②そこで語られた言葉の逐語録を分析していく、というインタビュー法が多いと思いますが、語り合い法は、①’協力者と研究者が自分の「感じていること/感じたこと」を互いに交わらせながら、共同構築的に体験の新たな側面を発見していく、②’語られた言葉はもちろん、やりとりの中で相手から間身体的・間主観的に感じられたことを記述し、分析・考察していく、というアプローチをとります。今回は、この語り合い法についても、その基本的な考え方を知り、体験していただこうと考えています。
 臨床実践を記述し考察するというのは難しいことですが、今回のワークショップでの体験が、皆さんの「引き出し」を一つ増やすことにつながれば幸いです。


講師紹介

大倉得史

京都大学大学院人間・環境学研究科教授
「自己とは何か」をめぐって青年期のアイデンティティ問題を研究するところから始まり、現在までに子育てや保育、障がい、刑事裁判の問題など広く関心を持って、気持ちの赴くままに研究や実践を重ねている。自分では、人間が生き生きと、主体的に生きるための条件を探っているのだろうと考えている。

主要著書
単著に『拡散 diffusion ―「アイデンティティ」をめぐり、僕たちは今』(ミネルヴァ書房, 2002)、『語り合う質的心理学―体験に寄り添う知を求めて』(ナカニシヤ出版, 2008)、『育てる者への発達心理学』(ナカニシヤ出版, 2011)など。共著に『尼崎事件―支配と服従の心理分析』(現代人文社, 2015)、『発達障碍のある人と共に育ち合う―「あなた」と「私」の生涯発達と当事者の視点―』(金鳳堂, 2020)、『接面を生きる人間学―「共に生きる」とはどういうことか―』(ミネルヴァ書房, 2021)など。


山本知香

滋賀大学教育学部附属音楽教育支援センター特任講師
「お互いが無理なく共に居ること」をテーマに音楽療法の実践をしながら、自閉スペクトラム症の子どもの自己性の育ちについて研究している。

主要著書
「ある自閉スペクトラム症の子どもと音楽療法士の〈出会い〉の考察 音楽の中で自己が析出するとき」・「『出会うということ』をめぐって ―ある自閉スペクトラム症の子どもと音楽療法士の〈あいだ〉に着目して」(笠原広一編『アートの体験を生きる 表現/実践/研究のあいだにひらかれるもの』(学術研究出版,2021)pp.75-118)
「自閉スペクトラム症の子どもとの音楽療法における音・音楽と接面──自己性の育ちへのアプローチ」(鯨岡峻・大倉得史編『接面を生きる人間学―「共に生きる」とはどういうことか―』(ミネルヴァ書房, 2021)pp.131-158)


定員:30名程度

WS参加にあたって
服装は自由。白い紙と筆記用具(文章を書くためパソコンでも可)